カタールW杯アジア2次予選を3連勝でスタートしたが、内容は?
森保JAPANは、10/10、10/15にモンゴル、タジキスタンと対戦して6-0、3-0と連勝。
ここまで3試合3連勝で首位に立っています。
11/14日にアウェーで2位キルギスと対戦します。
ワールドカップ2次予選はグループ1位と2位の成績上位半分が最終予選に進出するレギュレーション。
第4戦のアウェーでFIFAランキングがグループ最上位のキルギスに勝つと1位通過はほぼ決まりという状態となります。
2次予選を心配しなくてよい状況を作っておくことで、12月のE-1東アジア選手権を新戦力発掘やオリンピック世代の強化にあてることができるので、次のキルギス戦は山場ですね。
今回はモンゴル戦とタジキスタン戦を振り返っていきます。
モンゴル戦・右の翼・伊東純也の発見
これまで右サイドは堂安律選手を起用してきた森保JAPANですが、この試合ではベルギーリーグの名門ゲンクで活躍中でヨーロッパチャンピョンズリーグでもプレーしてる伊東純也選手を起用しました。
堂安律選手は左利きのカットインドリブラーで、右サイドから中央に向かってプレーするタイプで、伊東純也選手は右利きの縦突破型ドリブラーなのでポジションは同じでもまったくタイプが違いますし、戦術的な役割も異なります。
堂安律選手の場合、ペナルティーボックス付近の中央で密集地帯を作り、カオスな局面を意図的に作って即興的なコンビネーションで打開することが狙いとなります。
伊東純也選手を起用する場合は、右サイドの大外のスペースを使って相手を横に広げて、中央、ハーフスペースに進入する事が狙いで、試合前に用意していたであろうサイドの崩しのパターンをモンゴル戦では頻繁に見ることができました。
今後も伊東純也選手は有効な攻撃のオプションとして重宝されるでしょう。
南アフリカワールドカップ優勝のスペイン代表との共通点。
2010年の南アフリカワールドカップで優勝したスペイン代表は、シャビ選手、イニエスタ選手、ビジャ選手といった攻撃的なタレントが揃っていてチームは戦術的な規制が少なく、選手間のコンビネーションや連携に攻撃は任されていた部分が大きかったチームです。
森保JAPANも西野監督がハリルホジッチ監督解任の後に選手の自主性を尊重した放任主義のマネジメントでロシアワールドカップベスト16である程度成果が出たので、継続して選手に任せるスタンスを取っています。
スペイン代表はポゼッション重視のスタイルでしたが、守備を固めてくる相手には苦戦する傾向があり、後半に攻撃の切り札として投入されていたのは、ヘスス・ナバス選手でした。
ヘスス・ナバス選手は右サイドで縦に突破してクロスボールを供給するスペシャリストで中央でコンビネーションで崩す選手が多い中で、全く違う役割を果たしました。
右サイドでヘスス・ナバス選手が張っていて個人能力でドリブルを仕掛ける事によって、右サイドバックが追い越すことは少なくなり後方待機が多くなり、その分左サイドの守備負担が減少。
左サイドバックが高い位置を取ることが出来て、左ハーフスペースにいるイニエスタ選手に中央でスペースが生まれます。
伊東純也選手が日本代表にもたらしたものもこの構図と似ていて、右サイドのスペシャリストを配置することで、右サイドバックの追い越しが減少して、守備に専念できる分、中島翔哉選手が中央でプレーしやすくなります。
堂安律選手を起用するときにはわざと中央に密集地帯を作りバランスを崩すことでカオス局面を作っているのに対して、伊東純也選手が入ることでポジションバランスが良くなり、スペースが生まれやすくなります。
後半のオープンになる時間帯に伊東純也選手の投入は効果的でスペイン代表のヘスス・ナバス選手のように切り札として伊東純也選手は、定番の交代パターンとなりそうです。
タジキスタン戦・中島翔哉の悪癖と後半の修正
タジキスタンは4-1-4-1で日本の中盤の形とマッチアップしやすい布陣でコンパクトにプレッシングをかける戦略で、日本代表はこれに苦戦します。
上手くいかなかった理由は、相手のワントップに対して2枚のセンターバックの植田直通選手、吉田麻也選手が数的優位の状態だったにも関わらず、相手の陣形を崩さない状態でビルドアップしていたことが挙げられます。
攻撃のスタートとなるセンターバックからの展開で相手を引きつけて陣形を崩すことができていないので、タジキスタンの狙い通りに構えている守備にわざわざ自らハマっていた状態が前半は続きました。
これは、センターバックのビルドアップ能力の不足が原因であり、モンゴル戦で冨安健洋選手を失った事が痛かったですね。
板倉滉選手、畠中進之介選手といったビルドアップ能力が高いセンターバックを起用しなかったことが裏目に出たともいえるでしょう。
また、センターバックからのビルドアップがうまくいっていない状態で、とりあえず解決策になるのは、相手の陣形の外側でボールを回すことです。
守備ブロックの中にボールを入れなければ相手の守備がうまくいっていてもボールロストは少なくなります。
しかしながら、左サイドハーフの位置に入った10番中島翔哉選手は中央でボールを受けたがり、左サイドは相手の外側でボールキープすることが出来なくなってしまいました。
中島翔哉選手は、サイドから中央に進入してボールを受けて生きるタイプですが、良くも悪くも空気が読めなくて何をするか分からないという期待と不安が同居する選手ですが、この試合の前半は完全に空回りでチームに混乱を引き起こしていました。
後半には中島翔哉選手は左サイドで幅を取ることと、ボールを受けに下がって中央に引いてくる時はダブルボランチのどちらかが最終ラインに入って左サイドバックの長友佑都選手が高い位置を取ったタイミングに限定していました。
この修正により、中盤の左のハーフスペースでスペースが生まれ、この日ワントップでプレーしていた本来はミッドフィルダーの鎌田大地選手がポジションを下げてボールを受けることが出来て日本代表にリズムが生まれだしました。
タジキスタンがこの左サイドのポジショニングの修正をつかめない時間帯で、中島翔哉のカットインドリブルで左サイドにディフェンダーの注意が集中した瞬間に視野から消えた南野拓実選手がフアーサイドでクロスにヘディングシュートで合わせて先制。
タジキスタンは、守備の修正ができない隙に攻撃に出る必要性が出て、足も止まりだしたので、先制点を取って以降は、戦術的な問題は起きず、スペースが得られて、日本代表は好き放題に攻撃できていましたので、先制点が全てでしたね。
中島翔哉選手に関しては、所属クラブのFCポルトでも監督に怒鳴られていましたが戦術的な知性と全体の戦況を見てポジショニング出来るようにならないと、いずれ日本代表にとって大きな弱点となることは目に見えています。
森保監督が自国出身の代表監督ですから、日本語でコミュニケーションが出来ることを活かして代表活動の短い期間ですが、中島翔哉選手の弱点を補正していく必要があるでしょう。
まとめ
今回は「サッカー日本代表W杯アジア2次予選F組を3連勝でスタート!内容は?」で、2試合を終えて、エースの大迫勇也選手を怪我で欠きながらも2連勝できて、伊東純也選手を起用した攻撃のオプションが出来たのはたいへんな収穫です。
森保監督は、タジキスタン戦の前半のような上手くいかない状況を意図的に放置して選手の自主性を促しているのか、解決能力が低いのかまったく見えてこないですね。
カタールワールドカップから逆算してチームを作っていて、何も具体的なことはメディアには見せないですから、A代表で森保監督を評価することは、判断材料が無くて難しいです。
東京オリンピックが試金石となるでしょう。