安部裕葵(あべひろき)のバルセロナ移籍の意味と!今後のJリーグの対応は?
久保建英選手がレアルマドリードB、安部裕葵選手がバルセロナBへJリーグから移籍しました。
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久保建英選手は小学生時代からバルセロナの下部組織で育っていて、スペイン語もペラペラ。
世界的に知られた存在でした。
しかし、国内で育ってプロ入りするまで世代別代表の経験すらなかった安部裕葵選手のバルセロナ移籍は状況が異なります。
誰でも日本の高校生が、バルセロナのようなビッグクラブに移籍する可能性があるということです。
この状況の変化からメリットとデメリットを探っていきます。
青田刈りが止まらないJリーグ
中田英寿選手がイタリアに渡る前にヨーロッパのサッカー界が中田英寿を知ったのはフランスワールドカップでした。
その後は、A代表の前にオリンピックで活躍した選手(稲本潤一選手など)がヨーロッパに移籍。
近年では堂安律選手、冨安健洋選手がU20ワールドカップで活躍してヨーロッパへ移籍を果たしています。
海外に渡るタイミングが早くなっている理由の一つは情報革命です。
インターネットで世界中のサッカー選手の情報が共有されるようになっていて、例えば、ワイスカウト(Wyscout)というサービスがサッカーの移籍市場を活性化させています。
ワイスカウトとは、全世界で合計55万人のサッカー選手のプレーを分析できる画期的なオンラインサービスで、毎週1,500試合の映像がオンライン上で提供され、常に情報は更新されます。
当然、J1、J2、J3まで観られるので、目に付いた選手を点ではなく線で追いかけることが出来るようになっています。
Jリーグは日本文化に合わせた独自の年功序列の年俸システムがあり、選手は一律で300万円程度からスタートすることになります。
さらに高校、大学サッカーというサッカー界では独自文化もあります。
ヨーロッパのクラブからすれば、日本の若手選手は異様に年俸が低いうえに、高校、大学から直接獲得してしまえば移籍金もかからないので、お買い得品とみられています。
安部裕葵選手は高校卒業から鹿島アントラーズで2年でバルセロナが目をつけました。
この流れが続くならば、育成年代の情報共有がさらに進み、Jリーグを経ないで移籍金なしで有望選手がヨーロッパへ次々と渡っていくでしょう。
Jリーグで学ぶものが無い?
海外移籍のこれまでの成功例はJリーグで3~4年プレーして、Jリーグトップクラスの選手になって23歳程度で移籍というケースでした。
しかし、Jリーグのユースチームが出来たことで、高校生の戦術理解度が高まり、優秀な選手は飛び級でトップチームで活躍するために、18歳以降にJリーグでプレーしても成長できない(と選手が感じる)ようになってきています。
これから、Jリーグが人気選手を引き留めていくためには、お金の面とサッカーを学ぶうえでの環境レベルをヨーロッパと同レベルに上げる必要があります。
観客を呼ぶ一流のスタジアムに国内外を問わない一流の人材に囲まれてサッカーが出来て年俸もJリーグにいた方が高いとなれば、イングランドの選手が国を出ないようにJリーグの選手も国内にとどまることになるでしょう。
日本は経済規模で世界の3位の国ですから、できないはずはないです。
問われるDAZNマネーの使い道
2017年シーズンから総額で2100億円の国内放映権を結び、各チームへ分配されているDAZNマネー。
最も恩恵を受けているのは2連覇した川崎フロンターレ。
川崎フロンターレはクラブハウスを改築。
食堂を作り、ユース育成への投資も拡大させています。
使い道としては長期的に効果がある素晴らしいものですが、一部の報道では賞金がもらえたことでスポンサー料を減らされ、使えるお金はさほど変化が無いともいわれています。
これまで、お金が無い中でJリーグは各チームが運営されてきたので、お金があるなら支援する必要はないよね?となる気持ちもわかります。
これは、川崎フロンターレに限らずどこのチームにもこれから起こりうること。
資金的な余裕が生まれても、将来へ投資することでクラブのビジョンを魅せる。
チームを維持させるだけではなく、さらに大きな夢を見せることが必要となってきます。
世界一のグローバルスポーツであるサッカーチームが強ければ、シティプロモーションにもなり観光客も呼べて地域経済の効果も出るでしょう。
ヨーロッパではGDP(稼ぎ)の10%がサッカー関連なんていう地域もあります。
バルセロナ市ではGDPの2%がFCバルセロナが稼ぎ出しています。
この比率は日本のGDPにおける農林水産業よりも大きい産業規模となっています。
サッカーというスポーツにこれだけの経済価値があり、Jリーグにポテンシャルがあることを理解してほしいですね。
2020年シーズンからは海外放映権の更新が行われて、賞金、配分金がさらに増加することが予想されていますが、いくらお金があっても日本人にサッカーの価値が分からないなら意味がありません。
必要な監督の進歩
いくら優秀な監督が来ても、選手やフロント、スタッフにその監督の戦術を実現するだけの土台が出来ていなければ、無駄に終わってしまいます。
日本代表ではハリルホジッチ監督が、ヴィッセル神戸ではリージョ監督がともに世界的な名声と実力を持ちながらも、日本を去っていきました。
彼らに問題があったとは思えません。
迎え入れるだけの体制が日本サッカーには無かったわけです。
日本の監督は体罰に代表されるような前時代の体育会系への反動なのか、自由を重んじる監督が多いですし賞賛されます。
また、一方で体育会系の悪い癖としての反知性主義がはびこっています。
「難しいこと言いやがって、サッカーは自由に感覚でやるんだよ」という10年、20年前の選手が持っていたマインドがそのまま監督になっても生き続けてしまっている人が多いです。
そして、なぜかそういうタイプが出世していきます。
日本サッカー界全体としてサッカーを研究する、学ぶ、分析するという知の蓄積がないままに、実践しようとする結果として、「なんとなく」その場にいる選手、スタッフだけが知の蓄積を共有。
日本でサッカーを学ぼうと思ったら自分で考えるか、たまたま良い師匠に巡り合うかのどちらかしか道はありません。
理論が体系化されないため、一部の人にしか貴重なノウハウが伝わらないという日本の徒弟制度の問題点がそのままサッカー指導者に当てはまってしまっているので、JFAアカデミーやS級ライセンス制度は早急に日本サッカー協会外部から人材を招いて改善していってほしいですね。
まとめ
今回「安部裕葵(あべひろき)のバルセロナ移籍が意味すること!今後についてJは?」でJリーグの若者が海外移籍する実態についてまとめてみました。
安部裕葵がJリーグに残していったもの
鹿島アントラーズで10番を背負った安部裕葵選手が20歳でバルセロナのBチームに移籍しましたが、
たとえバルセロナであってもスペインの3部リーグに行った方が、Jリーグのビッグクラブよりも稼げて、学ぶことが多いと安部裕葵選手が判断したという事実は重く受け止める必要があるでしょう。
そして、安部裕葵選手の判断はおそらく正しいので、Jリーグを抜本的に改革しなければ、世代別代表クラスはみんなヨーロッパへ移籍してしまうかもしれません。
そして、外国人枠を少なく守っていても日本人選手が海外に出ていっている時点で意味がありません。
国籍を問わずJリーグでプレーしたいともっと思わせるリーグにしていかないと衰退するしかありません。
バルセロナに日本人選手が誕生したと喜んでばかりはいられないという現実を安部裕葵選手は突きつけてバルセロナへ移籍していきました。
選手が成長しているならJリーグはさらに成長しなければタレントは流出するばかりです。